遺産分割確定までの賃貸収入帰属

相続開始後で分割確定までのアパート家賃収入は誰のものか



相続開始後で分割確定までのアパート家賃収入は誰のものか


2005年9月12日 第560号

夫が1996年に亡くなります。相続人は妻と子4人です。夫は大阪府内にアパートなど17の賃貸物件を有していました。

(以下日経新聞2005.9.9.と最高裁判決を参考にしています。)

遺産分割協議は裁判所に持ち込まれます。大阪高等裁判所が2000年に遺産分割を決定し、やっと遺産分割が確定しました。

しかし遺産分割確定までの間の家賃の配分が問題になります。

遺産分割確定後の家賃収入は各物件をそれぞれ相続した相続人が受取るのは当然のことです。

問題は、亡くなってから分割確定までの3年余の家賃収入2億円です。とりあえず法定相続分で配分していたようで妻は1億円を受取っていました。

分割確定前の家賃を請求


妻は家賃収入の多い賃貸物件を相続します。民法には「遺産の分割は相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる」とあり、妻側は相続した賃貸物件の家賃も相続開始の時からすべてが自分のもの、と考えます。

だから妻は子に対し「過去の家賃を精算しろ」として差額分9000万円を請求します。

大阪高裁は、家賃を生む不動産を妻が相続したのだから、「遺産分割の効力が相続開始の時にさかのぼる以上は、…各不動産から生じた賃料債権は、相続開始の時にさかのぼって、本件遺産分割決定により本件各不動産を取得した各相続人にそれぞれ帰属する…」とし、妻の請求を認めます。

最高裁に持ち込まれました。


最高裁(2005.9.8)は次のように判じます。妻の負けです。

複数の相続人がいるのなら、相続開始から遺産分割確定までの間の相続財産は、相続人全員の共有の状態にある。

家賃収入は相続財産とは別個の財産であり、遺産分割が決まるまでの家賃収入はその相続分に応じて各相続人がそれぞれ単独で取得するものだ。


だから「相続開始から本件遺産分割決定が確定するまでの間に本件各不動産から生じた賃料債権は、被上告人及び上告人らがその相続分に応じて分割単独債権として取得したものであり、…これを前提として清算されるべきである。」と判じました。

つまり、家賃収入は……


アパートが遺産として残されました。家賃は誰のものですか?

相続開始から遺産分割確定まではすべての相続人が法定相続分によって分けます。

そして遺産分割が確定後はそのアパートを実際に相続した人のものになります。

ただし遺言によるのなら最初から遺言によりアパートを取得するので取得した人のものです。


この考え方は今回の最高裁判決前から一般的なものであり、特に新しくなったというものでもありません、念のため。

誰が家賃の申告をするか


所得税もこの考えに従います。

分割確定前は各相続人がそれぞれの法定相続分に従い不動産所得の申告するのです。誰かが家賃すべてを受取った(預かった)としてもそれを自分の所得として申告するのは間違いです。

ただし家賃全額を相続人の誰かが申告していれば税務署はトヤカク言わないことも多いはず。

税務署も他人の相続争いに巻き込まれたくはないし、家賃総額が変わらないのだから全体では同じなので実害はありません。

ある相続人の所得を増やせば、その分を他の相続人の所得から減らすという面倒が生じますし。

誰かが税金を払ったならば


ちなみにこんな通達(通基通5-22)もあります。「…遺産の分割その他の事由により相続人または相続分もしくは相続財産に異動を生じた場合であっても、その前に生じた承継国税および納付責任の消滅の効果には影響を及ぼさないものとする。」

亡くなった人の払うべき税金を、いったんある相続人が納税したならば、その後に違う相続人が負担すると相続人間で決めたとしても、最初に払った人は国に対し返金しろなどと言わないでくれ、とのお願いなのです。

cats_back.gif





バードレポートとは


 
clip_blue_1.gif


生命保険の関連サイトと生命保険の比較解説ページ

バードレポート発行元は次のような生命保険のサイトや生命保険の比較ページの運営もしています。

生命保険     





前号

次号


関連する項目
相続税対策申告
路線価評価相続評価
物納と相続税調査
相続対策と遺産分割



項目:相続対策と遺産分割
年内最後の相続税対策は贈与
相続財産と第二次納税義務
相続人の銀行預金取引経緯開示請求
中小企業経営承継円滑化法
IT・ネット時代の秘密証書遺言
経営承継円滑化法で遺留分
遺留分減殺請求と相続開始年分贈与
遺留分放棄と遺言で相続争い対策
遺言や不動産取引と認知症
くワープロ秘密証書遺言
自筆証書遺言の気楽
カネボウ再生に学ぶ
遺言書の効力・株式所有と会社支配
後継ぎ遺贈と受益者連続信託
公正証書遺言は検認不要
遺産分割確定までの賃貸収入帰属
相続で分散した同族株式
遺産分割やり直し
財産分与と詐害行為
相続開始年分贈与
遺産分割協議のやり直し
兄弟喧嘩解消の会社分割
相続取得と時効取得
相続争い対策「遺留分の放棄」
非嫡出・遺留分・正妻の地位

このレポートと同じ年分リスト
2005年リスト



当社運営サイト




  • 生命保険評判ランキング


  • バードレポート

    Google
    Web検索
    当サイト検索
    バードレポート項目別
    不動産ビジネス手法
    不動産賃貸経営
    不動産と金融会計
    定期借地権定期借家
    不動産証券化
    債務整理と企業再生
    不良債権処理
    債務処理の税務
    相続税対策申告
    路線価評価相続評価
    物納と相続税調査
    譲渡税買換特例
    住宅税制住宅減税
    固定資産税
    税制改正
    その他不動産税制
    その他税制
    相続対策と遺産分割
    生命保険
    その他不動産関連
    その他
    トピックス版2001年
    トピックス版2002年
    トピックス版2003年
    トピックス版2004年
    トピックス版2005年
    トピックス版2006年
    トピックス版2007年
    トピックス版2008年
    トピックス版2009年
    トピックス版2010年
    バードレポート以外
    メルマガ2002年
    メルマガ2003年
    メルマガ2004年
    メルマガ2005年
    メルマガ2006年
    メルマガ2007年
    メルマガ2008年
    メルマガ2009年
    メルマガ2010年
    メルマガ2011年
    メルマガ2012年
    発行元情報
    広告
    バードレポート発行順
    2011年リスト
    2010年リスト
    2009年リスト
    2008年リスト
    2007年リスト
    2006年リスト
    2005年リスト
    2004年リスト
    2003年リスト
    2002年リスト
    2001年リスト
    2000年リスト
    1999年リスト
    1998年リスト
    1997年リスト
    1996年リスト
    clip_blue_1.gif
    clip_blue_3.gif