後継ぎ遺贈は民法では不可。受益者連続信託を使えば可。


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相続問題

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後継ぎ遺贈は民法では不可。受益者連続信託を使えば可。


2006年4月10日 第588号

「この財産は妻が相続する。そして妻が死んだら妻から長男が相続する。長男が死んだら孫に…。」という遺言は無効といわれています。これを認めると死者が延々と財産の所有者を指図することになります。

民法では認められないこの「後継ぎ遺贈(遺言)」が、信託法改正により信託を活用すればできるようになります。改正信託法は今国会を通過見込みです。

後継ぎ遺贈型受益者連続信託


「改正信託法第91条 受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から30年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。」

「自分が死んだら、受益権は妻が取得する。妻が死んだら長男が取得する。次は次男が…」は有効です。法制審議会の議事録を読むと「将来生まれるであろう次男の子に…」の可能性までも議論されていていました。

これは「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」と呼ばれます。同じ内容で所有権を遺言に託しても無効といわれます。しかし所有権を信託銀行等の受託者に信託し、その信託受益権者を順次指定することは可能になります。


ある時点の財産の所有権者が、その死んだ後にも延々とその財産の信託受益権者を指定し続けるということです。ただ永遠に死者が拘束するのは困るとして、30年後の受益権者限りという限定がされています。

信託受益権とともに受益権者指定権(変更権)を妻に渡せば、夫の死後に妻は「長男ではなく三男に変更する」と変更もできるでしょう。しかし、勝手に変えられてはわざわざ後継ぎ型にする意味がありませんので、指定権は引き継がせないでしょう。

もはや妻は誰が引き継ぐのかを変更できなくなります。つまり向こう30年間死者が所有権者を定め続けることになります。

先祖代々の財産であっても


自分で築いた財産や創業した事業ならその行方を現所有者が決定するのは当然でしょうが、先祖代々の財産も同じ扱いを受けることになります。

先祖代々の不動産を信託した上で、まずは妻の生活のために妻に引き継がせて、次は誰かに、最終的には「一番かわいい孫」に引き継がせることができます。長男も次男もその決定に異論がはさめなくなります。


なお遺留分減殺請求は信託法の定めにかかわらず存在します。

全財産を信託受益権化し順次引き継がせることが可能になりますが、他の相続人はそれをもって遺留分減殺請求を封じられることなく減殺請求が可能です。

信託ビジネスとしての活用


各業界はビジネスの香りを感じるのか揃って賛成です。

信託協会「その有効性を認めることが妥当である」。日本司法書士会連合会は「民法ではこれを認めないとするのが現在の有力説である以上、その代替的機能を果たす受益者連続の信託を利用する…」。日本商工会議所「事業承継に関する選択肢の幅を広げる観点から導入に賛成…」。ただし日弁連は「有効だが、一定の限定を」と冷静です。

相続の根本問題として民法が認めていなかったことが、ほんのわずかの法律専門家だけの短い審議で解禁されます。

これからの日本には、生まれながらにして後継者や、生まれながらにして資産家が続出するかもしれません。30年期間制限と遺留分はあるものの、旧民法のような家督相続も指定できます。驚くような使い方もされるでしょう。そして信託受託者はまともな者とは限りません。


ビジネスとしては新制度として最大限利用して当然です。ただ格差は大きくなり、無力感が充満するのではないでしょうか。






 

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