相続税は物納から売却へ

相続税は物納から売却へ…つなぎ資金に延納は使えるのか



相続税は物納から売却へ…つなぎ資金に延納は使えるのか


2007年9月3日 第655号

相続税は物納から売却へ


相続税の物納は急減です。平成4年の申請は12,778件。それから減り続け、平成14年5,708件、平成18年は1,038件です。

都市部では地価高騰で更地での物納はほぼなくなりました。路線価よりずっと高く売れるようになり売却が有利になりました。相続税納税戦略は一変です。

さてここ10数年間の地主さんの相続税納税実務は次でした。

まず「とりあえず物納申請」。地価下落時代はちょっとの失敗で相続税破産ですから、売却見込みでも万一に備え物納申請という保険をかけます。物納手続きは慌てる必要もなくゆっくりでOKでした。同時並行で売却交渉です。高く売れるなら物納でなく売却にします。物納申請を取り下げ、延納に変更してもらい、納税時期からの延納の利子税(金利)を払います。

この相続税納税実務も一変します。地価高騰で売却が物納より確実に有利だからです。保険としての物納はもう不要です。

物納ブーム前の昭和期の相続税納税に戻ります。


昭和期の相続税納税実務は次です。当時は相続税申告まで6ケ月(今は10ケ月)でした。6ケ月で売却納税までは無理です。つなぎ資金が必要でした。そのつなぎ資金に相続税の「延納」が使われました。延納は利子税(金利)を払い相続税を最長20年間分割払いにするという、いわば国による相続税ローンです。

とりあえず延納申請です。これも慌てる必要はなく、ちゃんと対応すれば延納却下など普通はありませんし、その間に売却をすすめ、売却代金で相続税一括納付です。形式上延納許可をもらい、それまでの利子税(金利)を払って終わりです。まさに「つなぎ資金」のための「延納」だったのです。

延納をつなぎ資金に使えるか


しかし単純に昭和期の実務には戻りそうにはありません。理由は2006年4月1日相続開始分からの相続税法改正です。

相続開始から申告まで10ケ月ですから、改正となった06年4月の相続分の申告と延納申請は07年2月です。改正後の新実務は始まったばかりなのです。

ゆっくりでよかった延納手続きは、審査に3ケ月(延長あり)との期限が切られました。また納税者は税務署からの不備訂正要求等に20日以内対応との期限も切られました。厳格となり、気楽な低利「つなぎ資金」としては使えなくなったようです。


また延納は「金銭納付困難とする金額」が限度です。かつては相応の作文(子が医学部入学予定や自宅新築予定で資金必要…)によりほとんどOKだったようです。しかしこの困難とする金額が明確化されました。

相続財産でなく納税者固有財産の預貯金等の明細までも求められ、手元に残していいのは生活費の3ケ月分等だけ。すべての預貯金等を現金納付にあてる必要があり、その後の不足額しか延納申請書に記載できません。

生活費計算方法までも定めらました。「本人月額10万円+親族一人当たり月4.5万円+税金社会保険料等」です。

「すぐ売却して、一括で払うから延納させて」とお願いしても、建て前として延納では売却は考慮されません。そもそも延納は「つなぎ資金」ではなく「長期弁済の納税資金」ですから。

新実務は始まったばかり。落ち着くのかはこれからです。


売却前提の相続税つなぎ資金


1.生活費だけ手元に残して本気の延納申請をする。

2.却下覚悟で延納申請をする。却下となれば延滞税。

3.銀行等の金融機関でつなぎ資金を調達する。

4.申告だけして延滞。延滞税を払う。最初の2ケ月は金利が低いので短期ならば…。


利子税率と延滞税率


不動産が相続財産の75%以上の場合での利子税の利率は現行年2.3%(変動。上限3.6%)です。

延滞税だと2ケ月までは4.4%(現行2007年分)、3ケ月目からは14.6%になります。

相続税を物納する為には生活費を切り詰めないといけない?(2006年11月13日 第616号)




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