相当の地代方式による借地権移転…よみがえる相続税対策
2007年9月10日 第656号
忘れられた相続税対策があります。「相当の地代」方式です。
土地神話時代の昭和期では相続税対策の王道でした。しかし地価下落時代に消え去りました。しかし地価高騰で蘇えります。
親所有の評価1億円の土地に同族法人が建物を建築します。
土地に借地権を設定し、法人が親から賃借します。権利金の授受は行いません。ポイントは地代を幾らに設定するかです。
地代は土地評価の6%の600万円に定めずっと固定にします。この段階で利用制限ありとして土地評価20%減ですが、基本的には借地権は発生しません。
さて土地が3倍の3億円に値上がりです。しかし地代は600万円のまま固定です。借地権はどうなるのでしょうか。
借地権を何と考えるのか そもそも借地権とは何なのでしょうか。借地権を「土地を安く借り続ける権利」と考えます。
1億円土地で、権利金授受なしならその6%600万円が世間相場地代と国は決めます。
世間相場地代を払うのなら法人に「土地を安く借り続ける権利(=借地権)」はありません。
土地が3億円に値上がりします。世間相場地代もその6%の1800万円に自動的に値上がりです。しかし法人は600万円という安い地代で借り続けます。
その安く借り続ける権利を借地権だと考えるのです。法人に借地権という権利が発生した(法人に借地権を移した)のです。これが相続税対策なのです。
借地権はどう移転するのか どのくらいの借地権が法人に移ったのか…。国税庁は算式を通達で定めています。誤解を恐れずにザックリ説明しましょう。
土地1億円が数年かけて3億円に値上がりします。
土地が3億円に上がるまでは法人に貸している土地(底地)の評価は、1億円のまま固定されます。路線価の値上がり分は全て法人所有の借地権部分となります。つまり借地権割合がゼロからどんどん増えていきます。
土地が3倍の3億円(ターニングポイント)に達すると、借地権が法人に完全に移ったことになり、その後は一般の借地人同様となり通常の借地権割合により計算することになります。
つまり土地が1億円から3億円への値上がり途中は、親の土地評価は1億円で固定され増えません。相続税は増えないのです。
土地の値上がり分は全て借地権として法人の財産になります。そして最終的に借地権が完全に法人に移ります。これが相当の地代方式による相続税対策です。
(通達の算式は複雑です。ここでは「通常の地代」と呼ばれる一般地代水準を貸宅地評価額×6%と仮定します。
すると上記「3倍3億円」ターニングポイントは土地の借地権割合で決まり、借地権割合50%なら2倍2億円、60%なら2.5倍2.5億円、70%なら3.3倍3.3億円、80%なら5倍5億円です。
計算過程で「その年」の路線価でなく「過去3年平均」があるので、実際のターニングポイント到達には時差が生じます。)
路線価は1月1日切り替わり 路線価上昇は実勢地価の後追いであり、1月1日で切り替わります。やるのならば早いうち、そして年内です。バブル期のある土地の路線価は2年で4倍になりました。この手法で一気に借地権を法人に移せます。
建物新築でなくとも、親所有の既存建物だけを法人に売却することでのスタートもできます。
欠点は所得税の垂れ流し ただしこの手法には欠点があります。個人が受取る地代が高額になり所得税住民税の負担が大きくなることです。
10億円の土地なら6%地代は6000万円。経費は固定資産税だけでしょうから、簡単に所得税住民税の合計最高税率50%に達します。もっとも昭和期の合計最高税率は88%でしたが、それでもやる人はやっていました。
そして土地評価額が値上がりしないのならば、多額の所得税住民税を払うだけで借地権が移る効果はありません。
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