実録不良債務処理 最後の切り札・滌除


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実録不良債務処理 第8回 最後の切り札・滌除


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実録不良債務処理 最後の切り札・滌除


実録不良債務処理 住宅新報1997年5月16日から7月4日まで連載 
第1回 不良債権処理と不動産第2回 資産家の相続税対策の清算第3回 苦しい連帯保証人第4回 マイホーム売却損第5回 土地売却で会社債務整理第6回 銀行は会社清算を要求第7回 担保売却後の残債第8回 最後の切り札・滌除
この原稿は97年春に書かれています。その後に税制の改正もあり・金融監督庁の対応も変わっていますので、現在とは異なるところもあります。またその後の貸し渋り等を経て、経済環境も大きく変わっています。そのために現在になじまない内容も有りますが、ご容赦下さい。特に金融機関の対応は、その後極めて厳しくなっています。この原稿は今となっては金融機関に対して好意的過ぎる内容になっています。バードレポートと重複する部分もあります。

住宅新報1997年7月 4日号掲載

 「滌除(てきじょ)」は民法378条です。長い間ほこりをかぶっていた条文ですが、不良債務処理が進むにつれて脚光を浴びています。
 滌除は「滌除屋」と呼ばれる事件屋の手法で不動産乗っ取りのブラックビジネスと思われてきました。しかし、不動産を流動化し、不良債権処理を進めるために民法が用意している制度なのです。まさに現在のような不良債権問題を抱えた非常時の為に用意された法律と言えるのではないでしょうか。
 借入を一部清算するために土地を売却したくとも、債権者である抵当権者が回収見込みのない債権であっても抵当権を外してくれないケースはよくあります。このような時に使われることになります。
 買主が抵当権付の土地を1円で購入して登記する。その買主が土地の時価を1億円と思えば、抵当権者に対して1億円払うと通知する。抵当権者はその1億円で納得するか、競売申し出をするしかない。納得すればそれで抵当権抹消となる。納得せずに競売申し出をするならば、まず1億円の1割増の1億1千万円を供託することが必要となり、またその土地が1億1千万円以上で競落されなかったときはその抵当権者が1億1千万円で買わなくてはならない。・・・・という仕組みになっています。確かに荒っぽく物騒な手法には違いありません。
 債権者である抵当権者にとって、後順位抵当権者が高額のハンコ代を要求する等で売却できないときの解決策としては担保権実行による「競売」があります。競売により後順位抵当権はきれいになり整理完了です。
 一方、債務者側から買主を見つけて抵当権を整理しようとすると、適切な手法がありませんでした。ところが、この「滌除」をつかうと、きれいに整理ができます。滌除は「債務者側から申し立てる競売」ともいえるでしょう。
 その土地を活用する力とノウハウを持ち、適正な時価で買いたいという買主を苦労して探し出した。しかし、わがままな抵当権者が売却に応じない。高く売れるはずもないのに「もっと高く売れるはずだ」と主張する。それならば買主には滌除を前提として購入してもらう。仕組みからも分かるように適正な価格であれば債権者は増加競売を申し立てることはないでしょう。
 滌除は、抵当権者との間とで不動産の価格を擦りあわせる作業です。抵当権者が「もっと高いはずだ」というのならば、増加競売を行えばいいだけの話です。いわば当事者間の価格調整だけで済みますから、ここには公的資金の導入の必要もありません。そして、滌除により国策である不良債権処理は早く進みます。
 また、滌除は金融機関との交渉の際の切り札にもなります。「任意売却に応じないのなら、滌除です。」となれば、その金額が適正な時価である限りは、金融機関はたとえいやいやであっても任意売却に応じてくれるはずです。この物騒な「滌除」はこのように任意売却の価格擦りあわせで使われるべきなのでしょう。
 滌除で苦労するのは買主の資金繰です。自己資金で行うのならばともかくも、借入金で行おうとすると、日本の銀行は貸してくれません。当然といえば当然ですが「滌除資金」と聞いただけで、普通の銀行マンは青くなって「ノー」です。確かに物騒な資金なのですが、その実は抵当権で凍りついた不動産を生き返らせるための有意義な資金なのです。
 なお、滌除が完了したからといって債務が全部なくなることはありません。いわゆる「滌除屋」は「これで無借金になります」と言ってきますが、法律の上ではそうではありません。借入金額のうちで、抵当権者に支払われた金額を超える金額は無担保借入金として残ることになります。そして、強引な滌除を行えば金融機関と抜き差しならない関係になることを覚悟しなくてはいけません。





 

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